主客が感性を研ぎ澄ませる時空の創造

日本の美は、現代アートのように作家の個性を「もの」に表出したものでなく、またコンセプチャルアートのように、言葉によって理解するものではない。受け手がどれほど知識があっても、感受できる「感性」を身につけない限り受け止めることができない。私は「総体の美」を実践するために、主客の感性が響き合う時間と空間を作ることが必要と考えた。

 

1995年から行っている会員制の「日本雅藝倶楽部」では、会員が感性を研ぎ澄ますプログラムを展開し、また時折さまざまな時間と空間を作り出してきた。

 

「総体の美」の完成は、受け手の感性の洗練なしには考えられない。

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​木々の声を聴く日

​2019

​日本文化が心の中心にある私はたらしいものより古美術のように、時間をかけて構築される価値や美しさに惹かれます。

​この軽井沢の空間プロジェクトは新しい家を、つくるより古き時代の軽井沢の山荘の様式を残した時間の骨格に、現代を生きる我々の自然の中で過ごすことの価値をアートに見立てて再構築した、空間作品です。土地の持つ歴史と風土を大切に再構築していくプロジェクトは、日本文化の手法のひとつ見立てと日本の素材で構成しました。

軽井沢の贅沢である

緑のベルベットのような時間の重なりの苔のアプローチからの山荘での時間。窓からの景色は一枚の絵画のようで、その景色から1日がはじまります。様々な色の美しい鳥の囀り、季節ごとに移ろう木々の姿は展開する絵巻物のようでこの歴史ある軽井沢の原生林の中で体験する時間を空間作品として「木々の声を聴く日」というタイトルにいたしました。

空間があり時間があり

その為のおすべて

​家具、作品、食器、、、が一体となった総体の美の作品です。

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​一客一亭 TAMATEBAKO GINZA

2020

ここはどこなのか

今はいつなのか

自分はだれなのか

黒によって磁場が変わり

白によって磁場が起きる

日本文化の本質を再び五感に集中することによって呼び起こす

TAMATEBAKO

一客一亭

感覚をうけとる

自分の奥に入っていけた時、扉は開く

そこには光、風、水

自然があらわれる

美術館であり

茶室であり

庭であり

五感を試みる

銀座から世界発信の新しい日本美学の

体感美術館!!

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​ゼロになる日

2020

2019年スタートした軽井沢空間プロジェクトは古き時代の軽井沢の山荘の様子を残した時間の骨格に、現代を生きる我々の自然の中で過ごすことの価値をアートに見立てて再構築した、暮らす時間の作品です。

八角形の古代文字の回文の作品がこの作品のコンセプトです。

八角形は森羅万象の最高のかたちとして、古代より世界で宗教を超えて神々と人間を結ぶ場や建築にあらわされてきました。

神代文字のひとつであるアヒルクサ文字、別名、龍体文字で上から読んでも下から読んでも同じ和歌である回文を重ねています。

その回文が空間全体に飛び出して描きました。語りかけるように8箇所にあります。

四方を彫刻したように不連続な白の空間は緑の姿をより強くします。

6月のはじめには窓に紫の山藤があらわれ、1週間だけの贅沢な劇場になります。

ダイニングからは緑と空が外にいるかのように見えてきます。

家具もすべて白にあわせてデザインいたしました。

都市での喧騒とスピードをリセットし、自然と対話することによって自己反省と自己解放に向かう日。

​時間を忘れて自由になれる体験空間での生活です。

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KO.TO.TA.MA BOX

2008

水と光と、涼の茶事

 

夏の茶事。心に浮かんだキーワードは「水」と「光」だった。この二つの要素で満たされた景色で客人をもてなしたい。そんなことに想いを巡らせ、涼の茶事を催した。

 

 構造はまるで単純な組立式の鉄製の茶室。どこにでも移動が可能で、どんな装飾も可能。どこまでも無個性。亭主の趣向次第で自在に姿を変えてしまう、そんな様子はどこか、本来の「茶室」の正統性をふまえているようにも思える。

 

 この茶室に私は和紙をぐるりと巻きつけ、美術家の須田悦弘さんをお招きした。和紙の茶室は滝迫る場所に設置し、砕ける飛沫がご馳走。床は水。いわば、この瀑布を存分にあじわっていただこうという趣向である。こうした状況で眺めてみたい花、それは、決して野で手摘みしてきた茶花ではない。もっと存在感と強さと、メッセージ性を持った現代の花。水すら拒絶するモダンな花をいける場所に、古代文字で「ひかり」としたためると、墨を背景にして夏椿が生き生きとかたりかけてくるではないか。

 

 点心には桐で仕立てた箱膳に手作りのイタリアンでおもてなし。主菓子まですすめると、茶室は姿を変える。照りつける太陽がすっかり姿をひそめるころ、和紙の茶室はシルクオーガンジーををまとって、光と風をやさしく受け止める空間になる。

 

そこには、発光するフロストガラスの水差しを置き、器なのか穴なのかと、問いたくなるような菓子器が畳上に影を落とす。濃茶茶碗は黒、添えた上布の古袱紗には「ひふみよ」と書いて私の茶事はクライマックスを迎える。

 

うつろうこと。

私の思う「美」はそこに宿る。

 

 

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竹丈庵

1999

90年代、土、石、紙、木、布や漆など「日本の素材」をテーマに活動をしていた私は、世間から書道家と思われていることが不本意で、集大成としての作品をつくることを思いつく。自身のアトリエであり「総体の美」を体現する空間作品「竹丈庵」の構想がはじまった。

 

様々な創作活動をしてきたが、空間では全ての要素が必要になる。表層的なデザインでなく、人の精神に影響を与える空間とは何か、その問いを日本の歴史的空間から考察しはじめた。

 

鴨長明が方丈記を書いた、広さが一丈(約3メートル)四方の空間、方丈。

利休が「待庵」、織部が「燕庵」、遠州が「密庵」を作ったように個人の思いが表す「好み」のかたちは形式を越えて、その人の精神を伝える。この原点には「寸法」があり、メートル法にかわった今日でもなお、尺寸法が着物をはじめとして隅々に息づいている。丈、尺、寸、分をとり合わせは、吉凶の意味をもっていた。このプロジェクトでこの秘中の秘を解いてみたくなった。

 

細川護煕氏に話をすると「竹のことなら安井氏に相談すると良い」とのことで、御所や待庵、如庵の修復などを手がける京都の安井杢工務店、数寄屋建築の第一人者安井清氏とのご縁をいただいた。安井氏が訪ねていらした折「慕帰絵詞」の絵巻物をお持ちになられ、そこに描かれた覚如上人の閑雅な住まい「竹杖庵」を見せられた。その名が示すとおり用材は竹づくし。「これを現代に復元しなはれ。」とおっしゃられたが、古典の「写し」するのではなく、その形に宿る「こころ」をくみ、現代に新しい精神や様式が見出すことこそ自分の本分だと伝え、その提案は辞退した。しかし、伝統に基づいた竹の美を具現化するには安井氏以外にはいないとおもい、安井杢が下請をするのは初めてだと笑われたが、引き受けていただけた。

 

コンセプト、素材、空間デザインは決まったが、実施設計をする人をどうしようかと思い、「海峯楼」の仕事を一緒にした友人の隈研吾氏に協力を依頼する。海峯楼でガラスと水をテーマにして、共にプロジェクトを作り上げてきた隈氏にとって、日本の素材をテーマにした空間作りは新しい試みであったようだ。彼はその後、日本の素材を取り入れたデザインで世界的に活躍することとなる。2002年、北京郊外に作られた代表作「Bamboo wall 竹屋」にも「竹丈庵」の影響を見てとれる。

 

こうして1999年に鎌倉に完成した「竹丈庵」は、「空間の間」に、しぐさ、ふるまい、室礼、音など「時間の間」を共存させることができた。空間、室礼、書、食器とすべてを自分「好み」で完全させたこの作品は、美しい水平線をめでる茶会や宴など主客の感性が響き合う場のつくりだし、私の活動の新しい拠点となり、「総体の美」実現することとなった。

 

コンセプト、デザイン、施主:川邊りえこ

実施設計:隈研吾建築都市設計事務所

施工:井上工業株式会社

竹施工:安井杢工務店

 
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華荘厳

2001

空華灼灼有何実
無色無形但有名
染浄元来不能動
雲霧䑓晴名濁清
実相如如一味法
迷人妄見三界城
四魔三毒空之幻
莫怖莫鷲除六情

空海の詩、虚空花之喩。
真言密教の寺院の講堂竣工の儀式の空間構成を依頼された時、ふと浮かんだ詩。
空海の思考の速さに文章がついてこれない時、ついに詩が結ばれるように地球に華開かせた真言密教はその思考の集積である。日本文化に多大な影響を与えた空海の芸術とは「身体的表現」であり、「言語的表現」であり、「精神的表現」である。
その膨大なる集積が重層なるイメージとなって押し寄せた。

やはり「蓮」  

選りすぐった美しい蓮、千本の蓮をバンコクから取り寄せた。一本一本から花をとり、そのひとつひとつの花弁を祈りを込めて折り込んでいく。手をかけられたその花はオブジェのように佇み。新たな表情を見せる。三日三晩その作業は続いた。

密教の神秘的な宗教儀礼とその修法の本尊をたてまつり荘厳する「蓮」

金箔にまさに開かんとする瞬間の蓮を曼荼羅にした。

光の曼荼羅に反射するようアクリルでつくった池に無数の蓮を浮かべる。

本堂のご本尊を奉る蓮曼荼羅。

ご参加の檀家さん歩く道筋を蓮で誘う。

御柱と五色の紐で結ばれすべてが空海と一体となった瞬間だった。

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日本人は四季を愛し、自然を慈しみ、幾層もの文化を蓄積してきた。
ところが、日本人なら知っているあたりまえのことを「知る」という機会が少なくなり日本人らしさを、歴史の彼方に忘れてきてしまったかのように見えた1995年。

 

日本を担っている方々に日本文化を伝えたい。日本雅藝倶楽部はそんな思いを携えて「日本の美の総合性」「日本の美の新しい様式」をテーマに日本の美へのまなざしを再構築すると為に発足した。日本の美は総体の美。そして受け手の感性がないと完結しない。その総体の美を実現していくため、受け手が感性を研ぎ澄ます為の独特なメソッドとプログラムを創り出し、その活動を展開してきた。

そして、20年。
世界と交流するためにも、国際性とは自国の文化を知り、多様な民族性を尊ぶこと。
これからの日本を担う方々に、表層的でない日本文化の奥行きと美意識、そして真髄を伝えたい。そして、自身の感性と創造力を磨いていくことこそが未来の宝となると思っている。

 

その東京教場は、港区三田の綱町三井倶楽部、イタリア大使館にほど近い静かで緑ある歴史ある場所に位置する。


そのマンションの一室は扉を開けると緊張感ある日本間の世界が広がる。
本物の材料を吟味した数寄屋大工によってつくられた静謐な空間。
床の間には12ヶ月の室礼と花が川邊によってほどこされ、歳時記や季節を知ることができる。都市の喧騒の中でまさに「忙中閑」。時間を忘れ、自分に向き合う空間が日本雅藝倶楽部である。

 

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京都御所の北側、同志社や相国寺にほど近い昭和初期に建てられた画家の日本家屋。

 

質素な佇まいは古き日本を思い出させてくれる。庭の緑を両側に眺めながら、朝夕に聞こえてくる木魚の音。夏は暑く、冬は寒く、呼吸する昔ながらの家から季節と自然を体感。個人の顔のある町、体験する四季の歳時記や行事、連なる歴史が身近にある京都での時間は、日本雅藝倶楽部にかかせない場面である。

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